厚生労働省や学会などの公的機関から、「おしっこのチクチクの治療マニュアル」という形で公式に発行されているものは残念ながら2017年現在ありません。
2001年度に出版された日本感染症学会・日本化学療法学会編集の「抗菌薬使用の手引き」の中に「急性単純性おしっこのチクチク」の記述があります。
急性単純性おしっこのチクチクは腎臓や膀胱になにも疾患がなく発症するおしっこのチクチクで、おもに性的活動期の女性に多くみられます。 大腸菌が原因になることが多く、抗菌薬(抗生物質)が良く効きます。
急性単純性おしっこのチクチクとは?
- 20~40才の女性の25~35%が罹患
- 感染症としては比較的軽症
症状の持続は
- 平均6.1日、平均2.4日の日常活動の制限
- 平均1.2日の就業制限
- 平均0.4日の臥床
がみられるというデータもあり、社会的損失は決して少なくありません。
【おしっこのチクチクの症状】
- 頻尿(尿の回数が増える)
- 排尿痛(排尿時の痛み)
- 尿の混濁
- 残尿感
- 膀胱付近の不快感
【尿の検査での診断】
- 膿尿(尿の中の白血球)
- 細菌尿(尿の中の細菌)
が見つかれば、急性おしっこのチクチクです。
より重い腎盂腎炎と区別は?
発熱や全身倦怠感などの重篤な症状がなく、血液中の白血球増多や血沈の亢進、CRPの上昇などの炎症所見がないことで腎盂腎炎と区別できます。 細菌尿は尿中の細菌が104CFU/ml以上、膿尿については尿中の白血球数10個/mm3以上が基準になっています。
薬剤の効果について
急性おしっこのチクチクの原因菌は、大腸菌が70~95%を占めます。 その他に、ブドウ球菌属、プロテウス、肺炎桿菌属、腸球菌属などの細菌が認められています。
10~15%の症例では一般検査で一般の細菌が証明されないこともあり、クラミジア、ウレアプラズマ、マイコプラズマなどの関与も考えられています。
急性おしっこのチクチクの原因となる大腸菌は、多くの抗菌剤が良く効きますが、ペニシリン系の薬剤に対する耐性菌が徐々に増加しています。
ニューキノロン系や新経口セフェム系の薬剤の耐性菌はほとんどありません。